はじめに

研究内容

研究成果

メンバー

プロトコール
   蛍光変換蛋白質のバルク変換
   BY-2 細胞の形質転換

植物細胞(写真館)

タバコBY-2細胞

実験室写真館

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 ゴルジ装置の増殖機構





ゴルジ装置
 ゴルジ装置は、イタリアジンのゴルジ氏により発見された細胞内構造体で、膜嚢胞が層状に重なった構造を取っています。この装置の構造的な特徴である嚢胞の重なりの理由は、生体物質の多段生合成の際に順序よく物質を変換する為、特に糖鎖等の多段合成を効率良く行うために、異なる活性を持った酵素群を持つ嚢胞が重なり合っていることに起因すると考えられています。動物や菌類において、ゴルジ装置はN-型の糖鎖の成熟化や、O-型の糖鎖の合成(動物)・成熟化を行っていることが知られています。植物においてもこの装置は同様な機能を持つと共に、植物細胞壁の構成多糖である、ヘミセルロースとペクチンの合成を担っていると、考えられています。特に、急速に増殖している植物細胞では、数百から数千のゴルジ装置が存在し(下図:対数増殖期のBY-2細胞)、アクチンケーブルの上を走りながら、小胞体からタンパク質を集荷し、また加工したタンパク質や合成した多糖を、細胞外、細胞質や液胞へと出荷していると考えられています。






ゴルジ装置と細胞分裂
 植物細胞の多糖の合成装置であるゴルジ装置は、細胞の分裂と生長の過程において、親細胞と娘細胞でどのようにしてその個数や機能をいじしているのでしょうか。動物細胞においては、細胞分裂の過程でゴルジ装置が小胞状に分解され、細胞分裂後に再構成されることが知られています。しかし、細胞分裂最後の段階である細胞質分裂の際に、植物はゴルジ装置由来の多糖を多量に必要とするため、このようなゴルジ装置の小胞化による機能停止は知られていません。実際、細胞分裂過程でのゴルジ装置の挙動を観察すると、親細胞の分裂に伴ってゴルジ装置が娘細胞に分配されているのが判ります(動画参照)。

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 この動画は、緑色蛍光蛋白質と1型プロリン水酸化酵素の発現によりゴルジ装置から緑の蛍光を発するようにした細胞に、FM4-64という色素を取り込ませて液胞膜が赤色蛍光を発するようにした後、細胞の分裂過程を約3時間に渉って記録したものです。

 緑色のゴルジ装置が、2個の娘細胞に分配されているのがわかります。したがって、細胞の増殖過程においては、ゴルジ装置の数が細胞の分裂に伴い増加し、その結果細胞当りのゴルジ装置の数が維持されています。しかし、この際のゴルジ装置の増加の機構については、既存のゴルジ装置の分裂によるものである、新規のゴルジ装置が合成される、という2種の説がありました。しかし、そのどちらが主流であるかについては、解明されていませんでした。

 そこで私たちは、既存のゴルジ装置のマーカー蛋白質と、新規に合成されたゴルジ装置マーカー蛋白質を、蛍光変換タンパク質を用いて異なる色で標識し、細胞の増殖過程において既存と新生のマーカー蛋白質をどのような割合で持つゴルジ装置が増加するかについて検討を行いました(Abiodun & Matsuoka, PCP 54 541-554, 2013)

 その結果、下図の通り、増殖過程のタバコ培養細胞BY-2株においては、ほぼ半数のゴルジ装置は新生蛋白質を受け取りながら分裂し、残りのほぼ半数のゴルジ装置は、新たに合成されるということを示唆する結果が得られました。